2012年7月30日(第2611回例会)
1.「中小会計要領」とは、中小企業の実態に即してつくられた新たな会計ルールです。
非上場企業である中小企業にとって、上場企業向け会計ルールは必要ありませんが、中小企業でも簡単に利用できる会計ルールは今までありませんでした。
「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」は、次のような中小企業の実態を考えてつくられた新しい会計ルールです。
・経理人員が少なく、高度な会計処理に対応できる十分な能力や経理体制を持っていない
・会計情報の開示を求められる範囲が、取引先、金融機関、同族株主、税務当局等に限定されている
・主に法人税法で定める処理を意識した会計処理が行われている場合が多い
2.この会計要領はすべての中小企業が利用できます。
中小企業向け会計ルールは、今回公表された「中小会計要領」の他に、「中小企業の会計に関する指針(中小指針)」があり、中小企業はどちらも参照することができます。
「中小指針」……会計専門家が役員に入っている会計参与設置会社が拠ることが適当とされているように、一定の水準を保った会計処理を示したもの
「中小会計要領」……「中小指針」に比べて簡便な会計処理をすることが適当と考えられる中小企業が利用することを想定して策定されたもの
3.中小企業の実態に配慮して、税制との調和や事務負担の軽減を図る観点から、多くの中小企業の実務で必要と考えられる項目(以下に抜粋)に絞って、簡潔な会計処理等を示しています。
「中小会計要領」が示している項目(抜粋)
①貸倒引当金
法人税法上の中小法人に認められている法定繰入率で算定する方法も使用できることを明確化しました。
②有価証券
有価証券の評価方法を、法人税法と同様、取得原価での計上を原則としています(売買日的有価証券は時価計上)。
③棚卸資産
中小企業で多く利用されている「最終仕入原価法」を、他の評価方法とともに利用できることを明確化しました。
④引当金
退職給付引当金について、従業員の在職年数等企業の実態に応じて合理的に引当金額を計算し、自己都合要支給額を基礎として、例えば、その一定割合を計上することとしています。
4.「中小会計要領」を活用して得られる効果
○決算書の信頼性が向上します。
○その結果、自社の財務状況が明らかになり、投資判断、経営改善等を的確にできるようになります。
○金融機関、取引先等から信頼され、スムーズな資金調達や取引先拡大につながります。
①財務の把握
「中小会計要領」に準拠した会計処理で日々の取引を記録(記帳)し、その記録を取りまとめた決算書を通じて、自社の経営成績や財政状態を知ることができます。
決算書は事業年度(1年)単位に作成されるのが一般的ですが、月次や四半期毎など定期的に管理することで、常に最近の経営状況を把握することができます。
②経営改善等
経営者が自社の財務の数値を用いて、自社の過去と現在の状況や、同業他社の状況と比較・分析することで、会社の課題や問題点などがわかり、将来の事業計画に活用することができます。
③金融機関等との信頼関係
自社の財務について、金融機関など外部の利害関係者への報告・説明が正確なものとなり、利害関係者との信頼関係の構築に繋がります。
つまり、財務経営力の強化が図られるうえ、資金調達力の強化も期待できます。
5.「中小会計要領」の策定に参画した中小企業、金融機関、税理士、公認会計士の各関係団体などと、事務局として策定に参加した中小企業庁や金融庁が連携し、一丸となって普及・活用を進めていきます。
政府における取組の一例
①日本政策金融公庫中小企業事業において、「中小会計要領」に準拠した計算書類の作成及び期中における資金計画管理等の会計活用を目指す中小企業に対し、優遇金利(基準利率▲0.4%)で貸付を行う融資制度を平成24年度から創設。
②日本政策金融公庫国民生活事業において、平成24年度より「中小会計要領」を適用している小規模企業に対して利率を▲0.2%優遇。