「好奇心は元気のもと」 (女優(落語家) 三林 京子(桂すずめ) 氏)

2012年10月15日(第2619回例会)

(担当会員:清水 美溥 君)

 
今日はお招き頂きまして有難うございます。今年の夏は色々なことがありまして、凄く落ち込みました。私の師匠であります山田五十鈴先生がお亡くなりになって、その1ヵ月後に非常に可愛がって頂き力になって頂いた元人事院総裁の内海倫先生がお亡くなりになりました。お二人とも大正6年生まれでお元気だっただけに非常にショックでした。家にこもってクローゼットを片付けたり、今、断捨離ということが流行っていますが、今、何に囲まれていたら幸せなのかということを感じて、身の回りをそういうふうにすると、凄く良いエネルギーが出ると本には書いてあります。まさにこれだなと思ったものの捨てられないものです。また、還暦を過ぎて年金の書類も書きました。「これだけしかもらわれへんの。仕事がなくなったらどうしよう」なんて思いながら年金事務所に行ったりもしました。
そんな時、勧められたのがカラー診断です。人には似合う色と好きな色が同じ人もいるし、違う人もいて、私の場合は後者でした。スプリングとオータムはイエローベース、サマーとウインターはブルーベースの色、私の好きな色はウインターのグループにある色で、似合うのはスプリングのグループにある色、色布1枚でびっくりするぐらい顔の雰囲気が変わるのに驚きました。カラー占いの方が「クローゼットや箪笥から似合わない色を全部出して処分して下さい」とおっしゃいますが、着物は高価ですのでそれができません。似合わない色を着るために何とかしようと、それに合わせて何かを買ってしまうので、物ばかり増えてしまうそうです。
たまたま友人に電話したら明日からインドに行くとのこと。滅多に会えない占星術の先生に会うので、生年月日と時間を教えてくれと言われました。彼女が帰国すると「三林さん、凄いわよ」と、2015年6月29日から私の天体になって18年続くそうです。60歳を過ぎてから18年間もエネルギーが燃える人は珍しく、それまでがしんどいので、今は色々な引き出しを作る時のようです。人間は単純ですので、その一言でクローゼットから似合わない色を出して人にもらって頂きました。箪笥やクローゼットの中はすっきり、物凄くいい感じになっています。断捨離というのは家の中を九等分して、玄関から入って一番奥の3つのエリアには人間関係、恋愛、結婚、社会的地位、仕事が集まるところ、そこにガラクタがいっぱいあるから駄目なんだと、今は必死で片付けているところです。家中が片付くのが2015年ぐらいになるのかなと思っています。片付くと家にいてもストレスがない、物があるから色々な問題が起きてきて、物が少しずつなくなっていくのは気楽だなということを感じています。
私の好きな女優さんの樹木希林さんのお宅にお邪魔した時のこと、家の中はピカピカ、何も置いてありません。まるでモデルハウスです。生活臭はゼロ、台所にも何もなくて、「台所を使わないのですか」と聞いたら「毎日使ってるわよ」と、全部収納してあるようでした。洗剤もスポンジも布巾も引き出しに入っていて、使う時に出して使った後は全部片付ける、棚の中も必要なものだけがピシッと入っています。不意の訪問でしたが他の部屋も見せて頂いたら、ベッドもきちっとベッドメイキングされていて、洒落たオブジェが置いてあって、お風呂も必要なものだけ、出ているのは電話の横のメモだけ、他には何もありません。ちょこちょこ出ている物が私の家にはいっぱいあります。洋服も必要なものだけ、靴は黒と紺と茶色の3足、これだけあれば大丈夫、本当に見事でした。「本はないんですか」と聞いたら少しだけあるそうで、読んだ後は売るかあげるか捨てるか、二度と読まないことは分かっていても私は置いておきたい方です。物がない分、豊かさというか、潔さというか、これが私との生き様の違いかなと思ってしまいました。片付ける時にはやたらに樹木さんを思い出したりしています。あんなふうに気持ちよく生きられたらいいなと思っています。彼女は、仕事はお金のためにやるという考え方で、「この作品をこんなふうにやりたい」という人ではありません。時間が短く出番が少なくギャラの良い方を選ぶ人です。限られた時間、縫い物をしたり自分の好きなことをされています。布団の仕立て直しも自分でされます。料理も手を抜かないし、電子レンジは使いません。仕事をしながら、あれだけ徹底して家事をするのは物凄く大変だと思います。そこまではできないけれども、彼女の生き様は好きですので、これからちょっとでも真似して、荷物を少なく身軽に色々なところに行けて、家に帰ってきても悩まないですめばいいなと、今年は感じてしまいました。今からは少し悟りを開いて、そっちの道へ行けたらなと思っています。ただ、女優であり、噺家ですので、必要最低限のものは必要かなとも思っています。
私には子供がいませんので、それができますが、子供さんがおられたら、子供のために財産を残してとか、なかなか割り切れないと思います。もし皆様も必要のないものがあるなと感じられたら、やってみて下さい。本当にすっきりします。不思議なものでなくなったら入ってくることも分かりました。三倉茉奈・佳奈ちゃんとお仕事をした時、踊りのお稽古に行くのに、私が姪っ子にあげた着物を返してもらって、それぞれプレゼントしたら、今度はご贔屓先の奥様から無茶苦茶良い着物をいっぱい頂いてしまいました。米朝師匠が、「取り込んだら全部出て行く、みんなに分けたら入ってくる」とよく言われていましたが、これだなと思っています。
私はシンプルかつ優しく、何があっても動じず、噺家ですから扇子と手ぬぐいがあれば、どこでもできますので、何かあったら人を和ませることができたら幸せだと思って生きていけたらと思います。来年4月20日にホテルエルセラーン大阪のホールで独演会をさせて頂くことになりました。最低3席することになっていますので、お時間がありましたら来て頂ければ幸いです。

本日はどうも有難うございました。