2013年5月13日(第2642回例会)
【医師を目指した理由から現在のクリニック開設までの道のり】
明治18年から医療に携わっている家系(4代目)であり、必然的に医師という職業を選んでおりました。祖母は東京女子医大の第1期卒業生で、岡山県で初めての女性医師でありました。20歳の時に他界した父親の専門が泌尿器科ということもあり、泌尿器科医を選びました。大学病院での研究あるいは赤十字病院のような大きな病院での色々な経験を積みました。特に大阪赤十字病院では18年間透析医療に携わってきたので、今度は地域医療の中での透析医療をやってみたいという気持ちが強くなったため平成16年10月より玉造にて医療法人大平会大森クリニックを開設開業することになりました。
【透析医療について】
人工透析(じんこうとうせき)とは、腎臓の機能を人工的に代替することで、正しくは血液透析療法と言われております。腎不全に陥った患者が尿毒症になるのを防止するには、外的な手段で血液の「老廃物除去」「電解質維持」「水分量維持」を行わなければなりません。日本では2011年末現在で、約30万人の方が人工透析を行っていらっしゃいます。
【趣味について】
1年前より、自宅のスペースを使って家庭菜園を始めました。昨年は、トマト・ナス・キュウリをはじめ、トウモロコシ・ゴーヤ・スイカ・大根などの栽培にチャレンジしました。週末の限られた時間を使って今年も農作業に汗を流しております。
また、昨年秋から、健康増進のためにボクシングジム(井岡弘樹ボクシングジム)に通うようになりました。井岡弘樹会長とは個人的に交流があり、今では、ジム所属の選手が出場する試合を応援しに行くこともしばしばです。
【透析クリニックにおける火災を経験して】
平成23年3月4日(金)、当院にて火災を経験しました。当院は、8階建てビルの6階、7階にて診療する透析クリニックです。場所はJR玉造駅から1分で、玉造商店街と隣接しております。当日の火災発生から消火までの流れは以下の通りです。
・男性患者が腹痛を訴え、来院(10:20)
・院長が、患者を6階外来にて診察中に男性患者が突然小瓶を投げつける。男性患者が再度別の小瓶をカバンから取り出し、小瓶の中身の液体を床に撒く。男性患者が液体の付いたハンカチに火を付け床に投げつけ、診療室を出る。(~10:25)
・院長が、ハンカチの火を靴底で消そうとするも、逆に火が靴に移り断念し、受付に消火器を持ってくるように指示した。炎が一気に天井まで燃え広がる。即座に、消防・警察に通報するようスタッフに指示し、スタッフにより消火器にて鎮火。黒煙のため、6階透析室にて透析実施中の患者36名に緊急離脱および避難するよう指示。その後警察到着、放火犯確保(~10:38)
・消防隊が到着。既に鎮火していたが、黒煙が6階フロアに充満していたため、排煙処理を開始。離脱できた患者さんが順次7階透析室に階段にて誘導開始(5名)する。消防隊のエレベーターの使用の安全が確認でき、1階処方箋薬局待合室に避難するよう指示し順次誘導開始し、約18分後に患者さんの避難が終了する。(~11:00)
・当日のスケジュール表にて全患者の安否確認開始。完了後、患者の抜針を開始。院長より患者に状況説明を実施し、全ての患者を送迎車にて帰院対応を行うとともに、午後透析の開始時間の変更を電話連絡。
(~12:30)
・警察、消防署の現場検証。(12:00~14:30)
・火災現場をシートで覆ったのち、午後透析を開始する。マスコミに向け、記者会見を開始。(~15:00)
・看護師による当日朝の透析患者宅へ自宅訪問。(体調・容態確認と次回透析スケジュールの案内)
翌日透析予定の患者さんに電話を行い、土曜日の透析が可能な旨連絡を行う。(~16:00)
・夜間透析終了後、焼失した物品を搬出。6階フロアの清掃(特に焼け焦げた臭いの除去を中心に)。作業終了は午前3時。翌日午前6:45から通常の透析を開始した。
今回経験した火災を振り返り、次のような事を感じ、また備えなくてはならないことを痛感しました。
1.放火は防げない
放火など起こりようがないと思っていたので、放火を未然に防ぐのは不可能に近く、実際に起こっても、状況把握し難い。
2.マニュアルの配備
火災マニュアルを予てから配布しており、患者さん・スタッフの危機管理意識を高めていた。
3.事前の役割の明確化
早急に役割等の指示を出すことができ、スピーディな対応ができた。
4.情報のコントロール
情報が独り歩きする。(マスコミ対策は慎重に。)
5.火災保険を見直すべき
設備・什器等、商品製品等の両者が入っていなければ、物の補償は少額になる。動産実損払い特約をつけておかなければ新品にはならない。
6.煙には要注意
最近の建築資材は燃えにくいが、一方で黒煙を多く出す。黒煙に曝露した電子機器類は、全て使用不能となってしまった。
7.迅速な復旧
迅速な復旧工事が患者・スタッフを安心させる。
8.消火活動に水を使えば…
今回は、消火活動が消防隊到着までに終了していたため、放水活動はなかった。実際に放水されていれば…。
いつ何時、火災は起こるかは分りません。備えあれば憂いなし。いち早い初期消火が被害拡大の大きな一歩となります。