「中高年の身体のケア」 (寺坂接骨院 寺坂 太二 氏)

2011年4月25日(第2554回例会)

(担当会員:中村 壽孝 君)

接骨院は昔からある職業で、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷などが私どもの仕事になります。ただ、骨折で来院される方は少なく、膝、腰、肩の痛みの治療が主です。
簡単なことですが、皆様方が勘違いされていることがあります。重い物を持って腰を痛めた、ぎっくり腰になったら、温めたらいいだろうとお風呂に入る方がおられますが、絶対に温めてはいけません。できるだけ冷やさないと腰が膨張します。シップの使い方をしっかりと頭の中に入れておいてください。温めてもいいのは慢性疾患の時です。膝の患者が一番多い季節は7~8月、クーラーにあたりすぎで、ひどくなると水が溜まる場合もあり、関節の稼動半径がいっぺんに狭くなったりします。
腰の痛みは色々な形で出ます。糖尿、リュウマチ、痛風をお持ちの方は周期的に痛みが出てきます。また、突発性のぎっくり腰、すべり腰、脊椎分離、こういう腰の痛みを持ってしまうと、腰の安定感がなくなります。原因はほとんどが運動不足、ちょっとだけ予防して頂ける方法が幾つかあります。脇腹の横の筋肉、外腹斜筋を強くすると腰の痛みが消えます。ぶら下がって頂くだけで十分です。ゴルフをする前には脹脛をうんと伸ばして、足首を捩じって動かしてから、屈伸と伸展運動をするだけで腰の負担率がかなり変わります。脊柱管狭窄症をお持ちの方は毎日やって頂くとかなり軽減されますので、家ではスリッパをはかない、ちょっとしたことを加味して頂くだけでかなり改善されます。男性の場合は前立腺肥大症という厄介な病気が出てきます。排尿感や残尿感、ひどくなると尿意がわからなくなります。年と共に出てきて、早い方であれば50代後半から出てくることがあります。治療法は背骨を引っ張って、脊柱菅の周りの筋肉をうんと柔らかくすることから始めます。脹脛と膝を柔らかくするだけで腰の痛みが半分なくなります。アフターケアではなくビフォアケアをしてください。ゴルフをした後、痛みがどこに出てくるか、膝、腰、肩、そこが一番のウイークポイントですので、そのへんを見極めて治療に専念して頂くのも一つの手です。
今できること、胸を張って手が後ろで付きますか。PNF、筋肉促進法といわれるもので、1970年にソビエトのスポーツアカデミーで槍投げの選手が何回治療しても痛みが取れない、そこで抵抗運動をすると痛みがなくなりました。それをアメリカがプロのスポーツ選手にやってみたところ、ほとんどの人が治ったということで、全米のプロの選手を全部集めてケアをしており、私は見に行ったことがあります。筋肉の固さとは、筋肉そのものを強くするのではなく、痛めている部分だけをとったらいいということです。それを画期的にやっているのが日本の鍼で、一番痛いところに、一番よく効く場所に刺激を与えます。ただ、それをしても筋力は尽きませんが、PNFをやると筋力がつきます。肩が痛い時、自転車のチューブを持って引っ張る、痛みを我慢できるところまで何回も、10回1セットで5回ぐらいやってみると、軽くなるのがすぐに分かります。診療所にお出でになる方には、体をほぐした中でそういうことをやっています。 リハビリテーションとは直訳すると社会名復帰させるという意味です。60代は60代の体にもっていく、ゴルフ、ボウリング、趣味のスポーツ、それに必要な体つきをつくっていきます。そのへんを間違えないようにやって頂ければ、かなりの効果が期待できます。
私どもにお出でになる方の半分以上が膝の方です。後の半分は腰の方で、上手に使い分けることが大切です。自分のケアは自分でしなければなりません。私を紹介して頂いた中村君なんかは何でもかんでも私に全部依存しています。彼なんかはクタクタになってお見えになります。ある程度の力をつける、ある程度の筋力をつけることがまず大切です。それができて初めて次のステップにいけます。60~70才になるとほぼ100%の方が膝が悪いと思われます。昔は人工関節を作るのが大変でしたが、今はセラミックで、動かしやすくて反動がありません。ただ、それは手術の部分で、診療所にお出でになる方は手術する前の段階、手術をしなくても十分対処できる方です。厄介なのは合併症を起すことで、糖尿をお持ちで足が腫れてきた、無理して使った、膝のお皿の中に水が溜まってきた、酷い時は20ccの注射で3本ぐらい出ます。私はほとんど抜きません。ドーナツ型の固定器具で上から押さえつけます。人間の体は出た水はきちんと元に戻るようになっています。関節の中に軟骨組織というのがあります。それが年とともにすり減って骨と骨が当たって痛みが出ます。その痛みをどうして取るのかといいますと、普通は運動をさせますが、膝だけは後でかなりこたえますので、無理な運動療法を避けて伸ばす運動とマッサージをしっかりとやります。一番困るのは膝が曲がらない、正座ができない、そういう方に対しては、水が溜まっている場合は冷やしますが、溜まっていない場合はできるだけ温める、カイロをつけて温めて頂きます。お風呂に入ってもむくんでいたら、水で冷やします。これを逆にすると酷くなりますので、そのへんのところもご自分で分かって頂かないと、治療と処置の仕方を間違えると大変なことになります。また、顎が外れる方、肩凝りが出てくると顎が外れやすくなります。大きな口を開けて外れることもあります。抜けてしまうと自分ではどうしようもなくはめてあげます。横向きで寝られる方は50肩になりやすく、肩凝りを起しやすくなります。
夜中の12時頃に、「子供の手が抜けた」とお電話があり、来て頂くように言ったところ、どうも服を着せている間に抜けたのが入ったようでした。恐がらずに入れるのは簡単です。これは脱臼ではなく、骨がなくて靭帯が支えているだけですので、慌てふためかずにやってみてください。習慣性で何回も抜けている子は母親が引っ張っただけでも抜けたりします。
以上で終らせて頂きます。本日はどうも有難うございました。