「大阪建もの探訪」(上田 茂久 君)

2010年4月5日 (第2508回例会)

皆さんこんにちは。卓話の番が回ってきました。今回で、新入会員時の卓話を含めて、確か7回目となります。卓話は様々なRC活動と同じように、大変自分のためになっております。この時間に、なにか役に立てる情報を提供できないかと考えています。

最近入会された方もおられますので、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は北区中津で建築設計事務所を主宰しております。業務内容はビル、マンション、住宅など一通りの建築設計業務を行っています。最近、新築がめっきり少なくなり、リニューアル、マンションの大規模修繕、耐震診断、建物劣化診断等の業務が増えてきております。皆さんもご存知のように2005年末に構造計算偽装事件が起きました。この事件以降、建築業界は、変動の時期を向かえております。建築士をはじめ建築業界全般の信頼回復が強く求められているところです。この情勢を真摯に受け止め、今後も頑張っていきたいと思っております。

今日は「渡辺篤史の建もの探訪」をもじりまして「大阪 建もの探訪」とし、大阪にある有名な建ものを紹介したいと思います。結構、大阪には有名な建ものがあります。その中でも歴史的に価値のある国宝、重要文化財、登録文化財を写真で紹介します。国宝、重要文化財は98件、登録文化財に至っては508件あります。ほとんどが寺院、神社の類ですが、住宅、文化施設もあります。

大阪市立愛珠幼稚園(重要文化財)
1901年に竣工した木造平屋建の園舎は、100年以上使用されている現役の園舎で、現存する幼稚園園舎としては日本最古である。園舎は当時の主任保母らの意見を参考にしながら、文部省の技師の指導の元で大阪府の技師が設計した。

旧緒方洪庵邸(重要文化財)
敷地は間口約12m、奥行き約39mの町屋で、目一杯建てられている。1階は教室、2階に塾生の大部屋がある。適塾からは、大村益次郎他、幕末に活躍する多くの人物を排出した。今もビジネス街にひっそり残っている。

泉布観(重要文化財)
国産の煉瓦造りの2階建てで、「ヴェランダ・コロニアル」という形式。建物の外周には花崗岩の柱が「トスカナ式」という形態で立っている。内装も美しく、天井が高く、シャンデリアが設置されている。

大阪市中央公会堂(重要文化財)
基本設計は、岡田信一郎。辰野金吾、片岡安が実施設計を行った。建物は鉄骨煉瓦造地上3階・地下1階建て。ネオ・ルネッサンス様式を基調としつつ、バロック的な壮大さを持ち、細部にはセセッションを取り入れている。

府立中之島図書館(重要文化財)
設計は野口孫市、日高胖。ネオ・バロック様式で建てられた外観は、大正ロマン漂う建築であり人気が高い。本館正面の門は特別な時にしか開かれず、一般利用者は階段両脇の入口から入る。私も正面玄関より入ったことがない。

綿業会館(重要文化財)
設計は渡辺節。外観はアメリカのオフィスビル風でさりげないが、クラブ建築らしく内部は充実しており、室毎に異なるスタイルで装飾されている。ジャコビアン様式と言われる2階談話室は全室中最も豪華な部屋で、撮影などにもよく使われる。

旧小西家住宅(重要文化財)
堺筋に面している。明治36年(1903年)に竣工。設計者は不詳。コニシボンドで有名な接着剤メーカーの旧社屋。北の端には衣装蔵があり、道修町通りから伏見町通りまで、南北1ブロックが広大な敷地になっている。。

芝川ビルディング(登録文化財)
中央区伏見町の北船場地区にある。この辺は戦災を免れたことにより、歴史的建造物が多く残っている。昭和2年(1927年)に建設。設計者は渋谷五郎。古代マヤ・インカ文明の装飾。全体にアールデコ調にまとめている。

新井ビル(登録文化財)
堺筋に面している。大正11年(1922年)に建設。設計は河合浩蔵。正面1階中央に4本のドリス式オーダー。1階の石の仕上げは、ルスチカ仕上げ2階以降は暗褐色のタイル張り。現在は洋菓子屋さんが入っている。