2010年12月20日 (第2539回例会)
今回で新入会員時の卓話を含めて2回目です。中々回ってこなかったので、僕はもう卓話をしなくてもいいのかなと勝手に思い込んでいたのですが、やっぱり回って来ました。
僕は、現代美術の画廊を経営しているので美術の話しが良いと思いましたが、会員の皆さんにあまり馴染みのない現代美術の話しより、皆さんが良くご存知で僕がとても好きなピカソの話しをしようと思いました。またピカソは現代の作家たちにもとても影響を与えています。一般的にピカソと言うと「わけのわからない絵を描く人」「天才」「20世紀最大の画家」もう少し興味のある人だと「写実から抽象に変化した画家」「キュビズムの画家」という感じですかね、どれもピカソなのですが特に「わけのわからない子供のような絵」を思い出す方も多いと思いますが、実際予備知識なく作品を見ると何が描いてあるか解りにくい絵が多いのですが、ピカソほど自分の感情を正直に作品に描いた人は少ないと思います。
特に生と死、関係した女性たちと言う視点は不可欠です。それを作品とともに見て行きたいと思います。ただしピカソは生涯に6万点とも数え方によっては8万点とも言われる作品を遺しています。91才で死んでいるので約3万3千日ぐらいです。毎日2枚以上の絵を描いた計算になります。枚数だけでも「20世紀最大の画家」でしょう。今日ご紹介できるのは、ほんの一部です。
1)少年時代(1881~1900) 1895年「裸足の少女」
ピカソは少年の頃から天才だった。
1897年「科学と慈愛」
2)青の時代(1901~1904) 1901年「カサヘマスの死」
パリへ、カサヘマスの死
1903年「人生」
3)バラ色の時代(1905~1906) 1905年「芸人の家族」
フェルナンド・オリビエとの出会い 1906年「化粧」
4)キュビズムの時代(1907~1909)
1907年「アヴィニョンの娘たち」
絵画の革命キュビズム
1909年「フェルナンドの肖像」
5)コラージュの時代(1912~1915)
1912年「エヴァが好き」
エバとの出会いと別れ 1915年「アルルカン」
6)新古典主義(1917~1925)
1917年「肘掛け椅子に座るオルガ」
オルガとの初の結婚
1925年「ピエロに扮するポール」
7)シュールリアリズムの時代(1925~)
1929年「赤い肘掛け椅子の大裸婦」
マリー テレーズ(17歳)との出会い
1937年「肘掛け椅子に座るマリー」
8)ゲルニカを描く(1937)
1937年「ゲルニカ」
ドラマール泣く女
1937年「泣く女」
9)戦争の時代(1943~)
1944年「納骨堂」
フランソワーズ・ジローとの出会い
1951年「フランソワーズ、クロード、パロマ」
10)晩年(1953~1973)
1954年「ジャクリーヌと花」
最後の女-ジャクリーヌ・ロック
1969年「接吻」
1971年「帽子の自画像」
このようにピカソは築きあげた画風にとらわれることなく、新しい芸術、そして新しい自分を開拓する事に挑み続けました。当時は非難されたのですが、己の信念で創造し新しい美術のパイオニアになり多くの若いアーティストたちに影響を与えました。それらの作品は現在でも新鮮に感じられます。
<ピカソとお金>
ピカソの人生は、貧乏のどん底から巨万の富の持ち主になる道でもありました。
もちろん少年の頃から描いていましたが、そう簡単に絵が売れたわけではありません。スペインにいる十代のころはもちろん、パリに出てからも貧乏でした。
初期の「青の時代」の青色は友人の死ということもありましたが、青い絵具が一番安いからだとも言われています。冬の寒い夜は、大量のデッサンをもやして暖をとったと言われています。もしタイムマシンがあれば、そのデッサンを買いに行きたいぐらいです。
1911年、ピカソ30才の時にニューヨークのギャラリーで作品が公開され、全米中の話題になります。そして世界中のアートコレクターたちが競って作品を買うようになりました。以後ピカソはお金に困ることは一度もなかったのです。ゴッホが結婚もできず、死ぬまで一点も絵が売れず、若くして自殺したのに比べたら恵まれすぎの人生です。
1973年ピカソが死んだ時に、遺産として4万点の作品が残りました、フランス国家が計算した遺産総額は当時7,400億円、オークションハウス・クリスティーズの専門家の見積りは倍以上でした。フランス国家は「ピカソ法」といわれた物納制を制定し、専門家が3,658点の作品を選んで1979年パリにピカソ美術館を設立しています。
また今年2010年5月4日ピカソの作品「ヌード、観葉植物と胸像」1932年の作品がN.Yのオークションハウスで競売にかけられ、ニューヨーク史上最高額の1億650万ドル日本円およそ101億円で落札されています。現在もっとも高額な作家のひとりです。
以上、つたない解説で失礼いたしました。長時間のご清聴、ありがとうございました。