「小売業の現状」(三枝 輝行 君)

2010年1月25日 (第2499回例会)

○際限なく拡大する商業施設
売上が伸びない中で、商業施設は確実に拡大の傾向をたどっている。大都市圏は都心並びに周辺地域で商業施設はますます増加傾向にあり、新規商業施設が開発されるたびに、従来の商業施設の売上は減少することは仕方ない、同時に都市部の空洞化も避けて通ることはできない。

大型のS,Cが開発されることは、そのS,C店舗の売上が順調に上がっているかどうかは問題でなく、少なくとも新商業施設に、一日平均1万人行くとして、商業施設が10か所できると、10万人の人が都心に出てこないのです。また、都心部においては、現在でも過剰店舗であるにもかかわらず、大阪の北、南地域で大幅な店舗拡大が進行しています。

北の百貨店と南の百貨店の増床面積は、約15万mに達します、甲子園球場の3.6個分になります。何度も言いますが面積の拡大が消費の牽引にはなりえないのです。恐らく結果は、拡大した商業施設の何処が勝ったか負けたかの問題ではなく全店舗が投資を吸収することはできないでしょう。

人口の減少、老齢化、物離れ等、商業にとり大変に厳しい背景があり、従来の商売の在り方を根本から見直さない限り売上の確保は困難であろう。

一方、地方の商業は、中心市街地の疲弊、旧商店街の疲弊がますます進んでいます。

地方の高齢化の進行は予想以上に進んでいます。また周辺大型商業施設の進出で地方中心部は目を覆う状態になっています。恐らく今後とも非常に困難な状況が続くと思います。商業施設の多様化も、既存商業の売上を確実に低下させています。

大型の専門店、家具、家電、スポーツ、ドラッグストアー等の売上は、従来の小売の王様と言われていた百貨店の売上を確実に凌駕しています。

また、無店舗販売の売上の伸び率も想像以上になり、これも百貨店の売上を凌駕しています。TV、カタログ、インターネット、携帯電話とその販売携帯の拡大が顕著であります。商品を手に取ることなく購買をすることに今や全く抵抗が無くなっています。通販は、購買する時間の節約、過去と違い商品に対する信頼感、インターネット上での、各メーカ商品の比較検討ができる、わざわざ店舗に行かなくても買物ができる便利さが消費者にうけているのでしょう。

このように、消費に対する選択肢が増えることが、既存店舗が衰退する大きな原因になっている。

消費者の意識も大変革を遂げている。消費者は物を所有することへの情熱と満足感を喪失している。特に若者は生まれたときから、自分の周りは物で溢れていたためあまり欲しいものがない。

美意識の変化、他人を判断する基準が変わってきている。自分への投資が物から、ことに変化「旅行、健康、趣味」いずれにしても、楽しくないことには参加しないと言うことは、今の商業施設があまりにも金太郎飴であり楽しさの面では全くないということです。

○百貨店の売上は何故に低落傾向に歯止めがかからないのか
1.新しい業態と、商業施設の増加により売上が低下
2.百貨店の地位変化
・小売業で最大の面積……SC、専門店、駅ビル
・何でも揃う……虫食い
・正札販売……年中値引き
・情報発信基地……消費者の方が早い
・楽しい場所……楽しめる場所はない
・便利さ……コンビニ、通販
*基本的に現在の百貨店は楽しくなく、あえて行く必要がない商業施設になっている。

○百貨店の今後
1.百貨店の経営者が過去の栄光を追い続けている限り未来はない。
2.統合、合併、店舗面積拡大が業界の活性化にはならない。
3.駅ビル、専門店、S.C、無店舗販売に売上を取られる
4.現在、百貨店が他業態に勝っているのは、化粧品と食品
5.店舗ごとに個性をださないと駄目
6.百貨店はこうあるべきだとの過去の経験を捨てねばならない、景気回復が再生にはつながらない。

個店の名前を聞いたときに、何を思い浮かべるのかが重要。

○これからの小売ビジネス
1.大規模小売業の苦境期
百貨店に未来はない、特に地方店の閉鎖は相次ぐ。

大型家電、郊外型SCもピークを過ぎ下降局面。
拡大は衰退への一里塚

2.これからの小売業「利便性と高齢化対策」
・車社会との決別
・コンビニエンス性 家電 宅配 コミュニケーション
・産地直販
・農家の農協離れ
・旧商店街の再生  以前の商店街に戻すのではなく、新しい町を造る、地方産品の集積場所にする。

時間の関係で満足したお話ができませんでしたが、現在の商業の在り方が、大変革の時を迎えています。過去の経験が全く役に立たない今、頭のなかを白紙の状態にして、消費者のために役立つ商業の立ち上げをする時代を迎えています。

今が、チャンス頑張りましょう。