「石油市場をとりまく環境変化について」( ㈱シェル石油大阪発売所専務取締役 中村 知史 氏)

2011年2月28日(第2547回例会)

(担当会員:鴻野眞太郎 君)

鴻野眞太郎会員
皆様は昨今の情勢をよくご存知だと思いますが、中東チュニジアから始まった大統領打倒のデモ以来、エジプト、バーレーンの方まで波及し、今はリビアのカダフィー政権打倒に明け暮れている内戦状態で、原油が高騰してきています。そんな中で6万箇所あったガソリンスタンドが3万を切って、山間のガソリンスタンド閉鎖に伴い、お年寄りが灯油を買えなくなったとか、お百姓さんがガソリンを買えなくて、何十キロも走らなければならないという、大変な状況になっています。それでは中村より、石油市場をとりまく環境変化について、スライドを見て頂きながらお耳を汚させて頂きます。

 

中村 知史氏
初めに、この一年間の原油価格の推移を見て頂きます。1年前は70ドル~80ドル前後で推移していましたが、去年春先のメキシコ湾の原油流出、ギリシャの経済不安の影響で90ドル近く迄上昇し、6月頃には70ドル近辺、そこからじわじわと上がって、年末からもずっと上がってきました。そこにチュニジアやエジプトの問題、リビアの政情不安で先週末で100ドル近いレベルになってきています。もう少し長い期間を見ますと、2008年に初めて100ドルを突破。120ドルぐらいまでWTIが上昇。原油価格は私たちのように実需で扱っている何倍もの金額、量が投機マネーということで動いており、ここ数年、特に半年ぐらいは全世界的な金余りで、原油が投機の対象になって更に上がってきています。
今後どうなるかというと、一般的な見通しでは、日本は需要がピークアウトで減退していますが、世界的には新興国、中国やインド、アメリカが少し元気になってきて需要は旺盛で、供給が少し足りないぐらいのポジションですので、ファンダメンタルズ、基本的な受給バランスは底堅いということになりそうです。
私どもも毎週のようにメーカーからの仕切りが上がっておりガソリン、灯油の価格が日々上がってきているのが実情です。特に今年の冬は寒くて灯油の需要、暖房用の需要が全世界的にかなり旺盛です。
国内の石油の需要見通しということで、2004~2014年まで10年間の実績と見通しが中央想定検討委員会から出ています。一目瞭然、右肩下がりになっています。2009~2014年の間に想定できる国内需要は3,110万キロ、53.6万バレル、日本国内の石油会社が持っている精製能力の10%強の需要が減退するという見通しです。
石油販売業の数字ということで、ガソリンスタンドの数と販売会社、10年のスパンで経緯の推移をみると、過去には全国に6万以上のサービスステーションがありましたが、平成11年で5万5千、昨年で4万、年末には4万を切って3万台に入ってきています。事業者数も10年前は2,800社弱あったのが約25%強の減、需要はこれからも下がりますので、競争が激化する中で、これらの数はこのまま右肩下がりで減っていくと予想されます。
そういう情勢の中で非常に厳しい法規制が石油業界に数多くあり、更に2つの大きな法規制が強化されました。一つはエネルギ供給構造高度化法、重くて安い原油を持ってきて、付加価値の高いガソリン、軽油を沢山作れる設備の比率を高めなさいということです。現行10%から13%への引き上げを目標に、これは販売会社ではなくメーカー、元売会社に対する規制です。分解装置を増強しようとすると数千億単位の投資が必要であり、装備率ということで設備を増強するのか、今持っている製油所の規模を縮小するのか二者選択を迫られています。現状は製油所の閉鎖、設備廃棄を打ち出すしかなく、これで需給環境が適正になり、長年石油業界が抱えていた過剰設備の問題は解消されるという意味ではいい流れかなと思っています。デメリットとしては処理の過程で出ていた副製品が出にくくなったことで、安定した安い値段での供給が難しくなります。当然、石油会社も厳しい状況で、採算性、収益性の追求が進む中、新規事業として太陽光、燃料電池、農業関係等を進めていっています。昨年には新日石とJOMOの大型合併があり、こういう流れは色々な形で進められて、拠点をシンガポールや中国に動かすという動きも予測されます。
石油業界は危険物を扱っており、ガソリンスタンドの下にはガソリンタンク、軽油タンクが埋まっています。我々販売会社に直結する規制の強化として、老朽地下タンクの漏洩対策ということで設置40年、50年を超えると漏洩対策義務化になりました。タンクを入れ替えるのに数千万、漏洩防止のための高性能な探知機やタンクの中のライニングで数百万、このようなことに投資するか、余力がなければ撤退、廃業を迫られています。この対策期日が2013年1月で、2012年中にSS数の減少が加速すると思われます。そんな中でSS過疎地化の問題が出てきます。製造側も販売側も2~3年の間にこういう課題を与えられています。そうはいっても日本は経済的にしっかりした国で、需要もしっかりしており、支払い能力の高いお客様に支えられています。需要の減少以上に競争相手となる石油業者の数が減っており、生き残った会社については、販売量自体が大きく減っていることはありません。何とか生き延びて、2013年以降も当社は関西地区を基盤に頑張らせて頂きたいと考えています。
そんな中で当社も、昭和シェル石油グループも、新規事業ということでソーラーパネルに力を入れています。シャープや京セラさんとは違う種類の、シリコンを使わない新しい太陽電池を開発し、宮崎に国内最大級の工場が建ち上がります。私どもも近畿圏を中心にソーラーパネル事業に着手しています。また、エコ灯油をこの冬から販売しています。天然ガスから生まれたもので臭いがほとんどなく、手に付いてもべたつき感がありません。環境に優しい新商品として拡販を進めていきたいと考えています。本日はどうもありがとうございました。