「中国人と日本人Ⅱ」(安積 覚 君)

2010年9月27日 (第2528回例会)

 前回の卓話に引き続き、中国人と日本人をテーマに話をさせて頂きたいと思います。

中国人と日本人、或いは中国と日本という関係を考えた場合、ここ昨今で随分と環境が変わってきているように思います。よりグローバル化してきている社会の中で、今や中国との関わり抜きに考えられなくなってきていますし、日本への影響というのも非常に大きいものだと言えます。日本にとっての中国の位置づけも随分変わってきました。私が駐在していた15年前はまだまだ中国の安い人件費を利用した世界の工場という位置づけでしたが、今や確固たる巨大マーケットとして日本の景気にも大きく影響を及ぼすほどの存在感にもなってきており、日本国内においても中国人は観光客として消費の欠かせない存在にもなってきています。

今回はまたタイミングのいいことに私の卓話に合わせたように尖閣諸島の問題が起こり、まさに中国人と日本人を考える絶好の機会のように思います。今回の問題は、事件が勃発して反日デモやレアアースの問題などの経緯から日本が中国人容疑者を釈放してしまったという結末ですが、この問題にしても闇雲に中国を責めてばかりいるのも私にとって違和感を覚えます。私も本件に関して中国をフォローするつもりは全くありませんが、そもそもこの問題に関しては今まで数年来における日本の中国への対応についても問題があるのであって、要するに中国人と日本人の認識をしっかり持っていないことに問題があるように思うのです。つまり、中国人にとって紳士的な対応と言うことはあり得ない話であり、全てのコミュニケーションは喧嘩から始まると言っても過言ではありません。そもそも人と接する心構えとして日本人の場合は穏便に事が運ぶように考えて接しますが、中国の場合は敢えて事を荒立てようと考えるのが普通です。そこから全てのコミュニケーションが始まるのであり、自分の要求が通ればラッキーであり同時に相手を無能と見なします。そして自分の要求が退けられても元々無茶な要求だと認識していますので何とも思いません。色々な「嘘つき」騒動もこれと同じ類です。北京オリンピックでは偽物の花火があり、上海万博では岡本真夜の曲を盗作した問題がありましたが、これらもバレなければ問題ないだけのことで、嘘がばれたところで恥ずかしいという感覚も極めて薄いでしょう。そのような感覚の違いの中で、今回の尖閣諸島の問題が起きるずっと前から日本の外交というものは極めて中国の言いなりになってきた部分が多くあるのは事実で、中国人からすると、日本人の無能さ故に少々理不尽なことでも言えるようなお膳立てが出来ていたように感じるのです。ですから、日本として中国の理不尽さを嘆くばかりではなく、中国人とはそのような性質として中国人と日本人の違いをはっきりと認識して対応してこなかったために、ここまで言いたい放題の状況までエスカレートさせるような事態を作ってしまったことについて、大いに反省して考え直すべき事だと思います。

例えば、日中友好という言葉をよく使います。日中友好という言葉の意味は日本語でも中国語でも同じなのであえて訳す必要も表現を変える必要もなくこのまま使っています。しかし、友好という言葉の意味は表面上同じでも解釈の仕方は中国人と日本人との間では随分違うように思います。日本語の意味での友好は説明するまでもないでしょう。友達のように信頼関係があり、相互理解があり、お互いのことを譲り合って考えられるような関係のことだと思います。「あの会社とは友好的な関係」もしくは、「友好条約を結んだ」となると、その関係した国なり会社なり組織からは少々ものを頼まれても友好関係故に聞いてあげようとするのがその効果と言えます。また、友好関係があると認識すれば、その関係を崩さないために余計なトラブルは出来るだけ避けようとするのが日本的な考え方でもあるように思います。一方、中国人にとっての友好は必ずしも日本的な意味での友好ではありません。これは実際のやりとりを見てきて感じることなのですが、中国の場合、自分たちに従ってくれる関係を友好と表現するような気がします。何かのやりとりで一歩進めたい時に日中友好という言葉を使う。それにより、日本人は「これからも更に友好関係を築いていきましょう。」などとまんまと友好関係という言葉に巻かれて言い分を聞いてしまう。また、日本人が中国人の誤りや嘘を指摘した際には「友好関係にヒビが入る」とここでも日中友好が有効に使われる。

結局日本人というのは非常にまともな人種であってしかも元来が島国で農耕民族でもあり、一方の中国人は陸続きの大陸の中で色々な侵略を繰り返してサバイバルをしてきましたので、今の社会のように日本が中国や他国と切磋琢磨して競争してサバイバルしていかなくてはならない状況自体、日本人にとって結構酷な話でもあると思います。しかしこのような状況におかれている以上、酷だとか何だとか言っている訳にも行かず、上手く競争してつき合っていく必要があるのも現実なのです。最初にも言いましたように、日本における中国の影響力、立場などは年々変化してきており、ますます中国との関わりが日本にとって不可欠なことになってきています。今までのような失敗を繰り返さずに上手くつき合っていくためにも、今一度、中国人と日本人の違いを積極的に理解することが、これからの日本を考える上でも非常に大事なことだと思うのです。