「大阪から福井へ」 (安積  覚 君)

2012年4月2日(第2596回例会)

 

弊社、安積濾紙株式会社はこの度、福井県に工場を設立致しました。今日は、弊社が福井へ工場を出すに至った経緯についてお話しさせて頂きたいと思います。
まず、簡単に会社概要についてご説明致します。弊社は安積濾紙の名前の通り、濾紙の製造販売を行っております。濾紙と言いましてもピンと来ないかもしれませんが、用途としてご説明しますと各工場における濾過工程で使われていたり、自動車のオイル、エアー、燃料フィルターに使われていたり、空気清浄機などのフィルターとして使われていたり、家庭用の用途としてコーヒーフィルターや油こしなどその他様々なところで使われています。弊社工場ではパルプを主原料として濾紙を抄きます。その抄きあげた濾紙をそのまま色々な形に加工してお使い頂く場合も多くあるのですが、一部自動車用にお使い頂いているものについては、その後樹脂を含浸(がんしん)させる工程が必要になり、その樹脂加工と呼ばれる部分についてのみ、今回福井へ移管することとなりました。もともと樹脂加工については、フェノール樹脂を含浸させることから危険物なため、かねてから現在の住宅地での生産については環境的な問題として抱えておりましたところ、誠に恥ずかしい話ですが、一昨年の10月にその樹脂加工部分における爆発事故が起きてしまいました。爆発当初の工場は、工場建家、生産設備とも爆発の影響を受け、生産をそのまま継続する状態ではありませんでしたので、一時はどうなるかとも思われたのですが、周囲の多大なるご協力と社員の懸命な努力によって何とか復旧することが出来ました。その後生産を継続するにあたって、改めて周辺環境の問題性を認識し、大阪から離れた場所への生産移管を検討することになりました。弊社は抄紙工場として水の供給が重要ですので、日本海側の水のある地域を中心に視察したところ、水の供給面、その他インフラ面、交通面など総合的に判断して福井県のテクノポート福井という工業団地に土地を手当てすることにしました。
昨年の5月に土地の調印を行い、10月に地鎮祭、11月に建築を着工し、先月3月に無事に完工しました。弊社としては事故がきっかけとなって福井進出が決まったことなのですが、福井としては久しぶりの企業進出でもあり、大変な歓迎ムードでした。土地調印の際には、福井県知事、福井市長立ち会いのもとで行われ、全国紙含めて新聞各紙、また地元のテレビではその日の夕方のニュースでも報道されました。進出するタイミングが良かったのか、非常に分不相応の対応を受け、非常に戸惑いました。何はともあれ工場も完成し、今月から工場がスタートすることになります。弊社としては国内の工場移転は初めてのことであり、絶対に失敗は許されないことでもあります。ここ1年間に受けたあらゆる方々からの感謝を胸に、再スタートしていきたいと思います。