「発達障がいとは?」(NPO法人チャイルズ 代表 是澤ゆかり 氏)

2010年6月14日 (第2517回例会)
担当会員  吉川 悦正 君

私は発達障害児を持つ保護者として、啓発活動や自立支援活動をしています。子供が中学1年生になりました。発達障害について、自閉症をメインとした発達障害は、生まれつきの脳障害で、一生治ることがありません。勿論、改善されていきますが、何らかの支援を一生涯必要とする障害です。発達障害は、自閉症、広汎性発達障害、アスベルガー障害、注意欠陥・多動性障害など、色々な種類、タイプがあります。いずれにしても発達に偏りを見せるのが特徴です。私の子供は重い知的障害を伴う自閉症、それにADHDという注意欠陥・多動性障害が合併している状態です。一般的な自閉症は知的障害を伴わない人たちのことを言います。ですから診断されていないけれども発達障害を持っている人は結構いるということになります。アスベルガー障害の人は全く知的な遅れがありません。発達に偏りを持っている群がちょっとずつ、それぞれ重なり合っている子供たち、合併している子供たちも沢山います。世の中で普通に生活しているけれども、実は発達障害があって、40代を超えてから診断を受けたという方もいらっしゃいます。6.3%の率で発達障害の人たちがいるといわれており、100人いれば6人が発達障害になります。一生診断されないままの人もおられます。原因として、育て方や保護者の資質、本人の資質という問題ではなく、先天的な脳障害です。

困ることは、成長過程で特に教えなくても自然に身につくことが身につかないことで、ルール、マナー、常識を獲得しないまま成長してしまうので、それが対人関係のトラブルにつながってしまいます。社会性の問題、コミュニケーション能力の問題、想像力の問題を兼ね持っていると発達障害と診断されます。3歳までに症状があるので、先天的であって、子育てによって出てくるものではないということになります。多くの場合、感覚異常、独特な感覚の過敏性を持っている人が多いです。アスベルガー障害の方は知的には普通以上の能力を持ち、IQ120~140の方が沢山いらっしゃいますので、研究者が多いようです。興味のあることには非常に豊富な知識を持ち、指先が驚くほど器用だったりします。何より難しいのは相手の気持ちになって考えることができず、一方的な考え方で人間関係を作ってしまいます。

注意欠陥・多動性障害、知的な問題はありませんが、環境を整えてあげないと集中して取り組むことができない、目的なく落ち着きなく動き回っているように見えます。時間にルーズな人も多く、衝動性があります。小中学校の間は、学級崩壊の原因の子供たちといわれていたと思います。投薬治療が有効です。

障害が、身体障害、精神障害、知的障害の3つに括られて、そこに入っていかない発達障害の人たちのための発達障害者支援法ができました。大阪市に発達障害支援センターができて、相談を一手に引き受けることになっていますがパンク状態です。そんな中で私ども民間に相談がくるという状態で、スタッフが交代で役割を負って市民の相談をお受けしています。発達障害者支援法により、ヘルパーを利用できたり、随分楽にはなりましたが、将来の心配はやはり就労です。18歳以降どうやって過ごさせるのか、引きこもりにさせずに社会参加ができるようにするには、私たちは何をしないといけないのだろう。事業主さんと障害者の間に3ヵ月のトライアル雇用期間を作ってジョブコーチという専門の方がついて、アシスタントしてくれるというシステムができています。できるだけ定着雇用をして頂きたいと努力していますが、人関係でつまずく人が多いです。大阪市には障害者就労・生活支援センターがあります。知的・精神障害の方の一般企業の就労率はとても低く、彼らには特技や、凄く能力の高い部分があるので、そういうところを認めて頂きたいなと思っています。また、ジョブコーチという立場の人が事業主と障害者をつないで、支援してくれて定着雇用を目指しています。

発達障害の子供たちが直面する問題の一つに虐待があります。行動や発言が不適切だったりすることでイジメに遭うこともあります。そういうことが原因で不登校、引きこもり、家庭内暴力などの相談が沢山あります。発達障害と気づかれずに、怒られてばかりの生活をしている子供たち、少年非行、少年犯罪につながって、ちょっと特異な事件を起こすということもあります。発達障害が原因で事件を起こすわけではなく、周りが気づいてあげないからそういう状況になり、社会に上手く順応できなくてホームレスになっている人もいます。

私たち親としては、隠していては改善されないので、堂々とお話をしていきたいと思っています。私たち家族の痛みを理解してもらえず、障害者差別、人権侵害ということもありますが、地域の方々に理解してもらうというのが重要ですので、息子は地域の小中学校に行っており、近所の人たちに助けて頂き、親切にして頂いています。本人たちは、なかなか理解してもらえないということで、「生きていても仕方ない」という言い方を小学校4~5年生からします。相談できる場所もなく、適切な療育をしてくれる場所も少なく、そんな中で自主的に作ったのが私たちのチャイルズです。最も不安なことは、親の死後、子供はどうやって生きていくのというところです。少しでも自立に向けて頑張って生きていけるよう取り組んできました。障害者は周りの人が扱いやすいように育てられることが多いですが、私の場合は、なりたい自分になって、自分の思いが暮らしの中に生きるようにと生活を支援しています。自己選択、自己決定、自己責任、沢山の中から選ぶことはできませんが二つの選択肢を示すと、どちらか選ぶことができます。持って生れた能力をどうやって使いこなしていけるか、どうやって引き出してやるのか、そのことに目を向けようと思うようになってきました。社会が彼らの能力を引き出して、一人でも多くの人たちが就労できて、社会の中で納税者になれるよう、私たちの活動も応援して頂ければ幸いです。