「職業奉仕月間にちなんで」(野村 卓也 君)

2011年10月17日(第2574回例会)

今月は職業奉仕月間ですので私なりに「職業奉仕」とは何か?を考えてみたいと思います。
ロータリーには社会奉仕、国際奉仕、新世代奉仕などの奉仕事業がありますが、これらの奉仕事業と職業奉仕が違う点は奉仕の対象です。各奉仕はそのメリットを享受するのは誰か第三者が存在しますが、職業奉仕の場合、その成果を得られるのは我々自身であるという点です。だからこそロータリーの目的は職業奉仕の推進にある、といわれているのでしょう。
1989年の規定審議会では「ロータリアンの職業宣言」が採択されました。また、「職業奉仕はロータリー・クラブとクラブ会員両方の責務である」という声明も発表されています。それらのもとになっているのは米国ロータリー・クラブ第一回年次大会(1910年)でアーサー・フレデリック・シェルドンのスピーチ「He profits most who serves his fellows best」にあるといわれています。つまり社会に対して最も奉仕したものが利益を受ける、という考え方です。
同じような思想は昔から日本にも存在します。二宮尊徳の「報徳仕法」や石田梅岩の「実の商人は、先も立ち、我も立つことを思うなり」や近江商人の「三方よし」などです。
また毎例会時に唱和する、ハーバートJ.テーラーが考案した4つのテストも会社再建のために実行された行動がもとになっています。この考え方は現代のCSR(企業の社会的責任)にも通じています。
さて、大阪西ロータリー・クラブとしての職業奉仕活動は職場訪問と出前授業にあります。
特に出前授業は今後力を注いでいかなければならない活動です。それは若者の失業率の高さに関係があります。不況による企業の採用減、といったことも理由の一つですが、仕事選択におけるミスマッチも大きな理由です。中学や高校生の時に職業観や仕事についての情報を得る機会はほとんどありません。また先生方自身がずっと学校の中にいて社会との接点がないため、有効なアドバイスや指導がしづらいということもあるでしょう。そのまま、仕事に就く、あるいは大学の専攻を選択する、ということになり、自分は何ができるのか、何にむいているのかがよくわからないまま社会に出てしまうことになります。
それらを解消するため、最近は「教育基本法」の改正が行われてきました。教育の目標として「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと」(平成18年)と定義するなど職業や仕事に関する項目を強化しています。
高校生に対するアンケート結果などでも進路選択に関する気がかりな点として「自分に合っているものがわからない」や「やりたいことがみつからない、わからならい」といったことが上位にきています。
また、進路指導への要望として「進学や就職に関してもっと具体的に指導してほしい」「もっと職業に関する知識を指導してほしい」などの声が大きいのが現状です。
さて、今年度の出前授業計画として昨年度に引き続き、大阪市立東商業高等学校へ出向くことを考えています。2年生を対象としてできれば月1回の授業を大阪西ロータリーとして受け持ちたいと思っています。2クラス、約80名が対象です。
平成24年4月にはこの東商業高校と天王寺商業、市岡商業の3校が合併し、大阪市立大阪ビジネスフロンティア高等学校として生まれわかります。
できればその新設校に対しても出前授業ができればと考えています。
作家の村上龍氏がベストセラーとなった中学生向け職業紹介の本『13歳のハローワーク』で「子どもが、好奇心を大切にして、好きな学問や技術、職業などをできるだけ早い時期に選ぶことができれば、アドバンテージ(有利性)が生まれる」と述べています。
また一方で小説『希望の国のエクソダス』には「この国には何でもある、ただ、希望だけではない」と書かれています。
私たちはロータリアンとして、人生の先輩として若い人が希望を持てるような社会を作っていく必要があるのではないでしょうか?
それが出前授業の大きな目標だと思っています。