「高齢社会における社会奉仕活動について」 ~介護の現場から見た社会奉仕活動について~(社会福祉法人 恩賜財団 大阪府済正会 泉尾特別養護老人ホーム大正園 社会福祉士 松本 秀美 氏)

2010年8月23日 (第2524回例会)
担当会員  相崎 秀樹 君

本日は大阪西ロータリークラブの定例会のテーマとして社会奉仕活動というテーマを頂き、講演の機会を得る事が出来まして、嬉しく思っています。

本題に入る前に、少し自分自身の事について紹介させて頂きます。私は、大阪市大正区にあります社会福祉法人恩賜財団済正会 泉尾特別養護老人ホーム大正園で介護の仕事をしています。この道を目指したいと思ったのは、高校時代に老人ホームへボランティアに行った際、その施設の所長さんがおっしゃった「幸せへの道は人を幸せにすることだ。だから福祉があるんだよ」という言葉が大きなきっかけとなっています。

私が働いている済生会が出来たのは、1910年明治天皇の「恵まれない人々の為に済生の道を弘めるように」との済生勅語によって創立されました。現在社会福祉法人恩賜財団済正会として、寛仁親王(ひろひとしんのう)殿下を総裁にいただき、全国に病院、介護老人保健施設、老人・児童福祉施設、障害者施設、訪問看護ステーションなどの事業を行っています。大正区では泉尾病院を中核とし特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設、知的障害者更生施設、デイサービスセンターなどが併設され、入所・通所されている方の社会福祉の向上に貢献しております。

本日のテーマに入る前に少し日本の社会にとっては避けては通れない高齢者問題について状況をお話させて頂きます。日本の高齢化率は1970年に高齢化社会に入り高齢者の人口が7%に達しました。1994年には14%、15年先には30%に達するとの予測がされ、日本は急速に超高齢化しています。現在、全国の特別養護老人ホームへの入所待ちの方の数は42万人に上ります。また、施設に入所していない地域で暮らしている高齢者の約3~4割の方が、独居または高齢者夫婦のみの世帯となっているのが現在の社会の状況です。最近の新聞でもありますように、100歳以上の方の行方不明問題や孤独死などの問題がみられますように高齢者問題は大きな社会問題となってきています。

医療費についても、年間36兆円が国民の医療費に使われていますが、70歳以上の高齢者にかかる医療費は16兆円と全体の半数近い44%を占めています。2000年に介護保険法ができ、現在65歳以上の方の5人に1人が介護保険を利用されており年間10兆円が介護保険で使用されています。15歳から60歳の生産人口が減少していく中で、超高齢社会を支える社会保障制度が十分追いつかず、今後日本の介護・医療などの社会保障給付と税・保険料の負担等、少子高齢化の問題は日本にとって避けられない社会問題となっています。特に今後高齢者を支える為には、社会の制度の充実と合わせて社会保障を維持していく社会のシステムが益々必要となってきています。

本日のテーマの社会奉仕活動についてですが、大正園では、毎月の誕生日会や季節の催しなどの行事を日々の生活の中に取り入れております。毎月様々なボランティア活動を近隣地域にお住まいの方々の多くのご協力を得て、入所者の日々の生活にうるおいあるひと時を提供させて頂いております。私たち職員のみの力では、入所者にうるおいある生活を提供することに限界があり、地域の方々の個人や団体の支えがあって成り立っています。

当園には、認知症がある方、介護を常時必要とされる方が多くいらっしゃいますが、多く方が来園して頂けるおかげで入所者の笑顔が増え認知症の進行がやわらぐ事にも繋がっております。それが園にとっても大きな支えとなっています。社会奉仕活動については、個人の社会貢献としてボランティア活動があり、企業・団体など法人では、慈善事業または営利活動を通して環境問題、あるいは社員のボランティア参加への企業としてのサポートなどがあります。一方で企業ブランド、企業イメージを高めていく側面を持っていますが、企業が実施する寄付や技術支援が、企業の社会的責任の一環として現在多くの企業が取り組まれております。

介護の現場から見た場合、先ほど申し上げました超高齢社会が到来する中で、地域の方々や団体・企業など様々なジャンルからのボランティア活動、地域で暮らす高齢者の見守り、地域で高齢者が安心して暮らせる環境作りなど、支え合う事が地域のコミュニティーの活性化となると考えています。

ロータリークラブの方々が持っている趣味や特技、経験などを活かし社会奉仕又は社会貢献につながる様なものを現在行われていると思いますが、今後もボランティア活動にご協力頂けたら嬉しく思います。

大正園も明るく地域に開かれた施設を目指すと共に、人と人との真心のこもった温もりのある介護を向上させる事を目標に日々頑張っております。

本日はお招きいただきありがとうございました。また機会があれば、大正園の方にも施設見学に来て頂ければ幸いです。