「梅田周辺貸ビル大戦争」(井本 一幸 君)

2010年11月29日 (第2536回例会)

私は、本年1月に満70才を迎え、阪神電鉄顧問を退任しました。阪神での47年間すべて不動産事業に携わり、その内約半分の23年間、阪神西梅田計画の完成まで行なってきました。従って今でもこの梅田地区の開発動向については、気になってなりません。その上前の卓話で申し上げました西梅田土地区画整理組合の今岡鶴吉理事長のご遺言で、私は大阪中央郵便局の建て替え計画を見届けねばなりません。これは私の勝手な思いです。

さて、本年5月6日阪急電鉄の梅田阪急ビルの「オフィスタワー」の部分が開業され、大阪富国生命ビルの建て替え工事も10月25日に竣工されました。そして大阪駅開発プロジェクト、梅田北ヤードの先行開発区域のプロジェクトもどんどん進んでいます。これらの開発計画が完成すれば、梅田はどうなるのかと考えますと、もうすでに本日のテーマとさせて頂いた「梅田周辺貸ビル大戦争」が起こりつつあります。従って本日は私の手元の資料に基づき、梅田周辺の開発状況についてご報告申し上げたいと思います。

● 梅田阪急ビル建て替え計画

延床面積約252千㎡、地下2階地上41階(オフィス棟:15階~41階)、大阪市の都市再生特別措置法により容積率1,800%の最大の容積緩和を受けたものです。オフィス部分の延床は約100千㎡、総貸室面積約70千㎡(基準階約2800㎡)、通常大阪では約1,500㎡ですからこのビルは2棟分のビルが建ったと思って下さい。阪急百貨店部分ですが、地下2階地上13階部分で延床約140千㎡、営業面積約84千㎡の従来の約1.4倍となります。この部分の完成は、すでに一部完成して営業開始されていますが、JR側の工事が遅れており、全体の完成は平成24年度になる見込みであるときいております。

● 大阪富国生命ビル建て替え計画

延床約69千㎡、地下4階地上28階、2階~5階は金融店舗、大阪大・立命館学園等の大学関係機関、1階及び7階~28階が、基準階約1,500㎡のオフィスである。地下2階は、商業施設を計画している。このビルのグランドオープンは、12月上旬の予定である。

● 大阪駅開発プロジェクト

大阪駅の大改造計画ですが、新北ビル(ノースゲートビルディング)は延床約210千㎡、大阪三越伊勢丹部分が延床約90千㎡、専門店部分が延床約40千㎡、松竹・東宝・東映グループの協力でエンターティメントゾーンが約10千㎡、フィットネスクラブが延床約5千㎡、地上28階のトップレストランが延床約2千㎡、それにオフィス部分が賃貸面積約21千㎡で、その中に伊藤忠商事の入居が決まっています。新北ビルのグランドオープンは、平成23年5月ごろと予定されています。

次に南側のアクティ大阪ビル(サウスゲートビルディング)増築計画ですが、大丸が延床約35千㎡増築され、平成23年春ごろ開業が予定されております。これで大丸の売場面積は、約64千㎡となり、阪神百貨店の売場面積約54千より大きくなります。

● 大阪駅北地区先行開発区域プロジェクト

このプロジェクトについては、当クラブの野村卓也会員がこの仕事に関連されていますので、野村さんにお願いしたいところですが今日は私がまとめさせて頂きます。

まず「梅田北ヤード」は、全体約24haです。その内先行開発区域は約7ha。本年3月末に着工され、三菱地所、オリックス不動産などの12社開発企業連合が、平成25年3月の完成を目指し、工事を進めております。

この区域を3つのブロックに分け、Aブロックは容積対象面積約169千㎡、容積率1,600%、用途はオフィス、商業施設。Bブロックは約261千㎡、容積率1,150%、用途は、知的創造拠点の「ナレッジキャピタル」、オフィス、商業施設、ホテル・レジデンス。それに最近英国系最高級ブランドの大手ホテルチェーン「インターコンチネンタル」が関西初進出することが出ています。Cブロックは約54千㎡、容積率1,150%、用途は、分譲住宅です。以上合計しますと、約484千㎡の容積対象面積の開発プロジェクトです。

● 大阪中央郵便局建て替え計画

延床約213千㎡、容積率約1,600%、地上40階規模の超高層ビルで、オリエンタルランドの劇場ができ、平成24年の開業を目指すと発表されていましたが、本年5月にこの計画を見直すと発表されましたので、少々遅れることになりました。

● 阪神百貨店、新阪急ビル建て替え計画

この計画も検討されていますが、内容がまだ不明ですので、今回の検討には入れないこととします。

以上をまとめますと、私の推定ですがオフィスの賃貸面積では、合計約470千㎡の増加、1層1,500㎡とすると約310層の貸室ができます。また商業施設では、延床約330千㎡の増加となり、阪神百貨店の約3店分が増加することとなります。このテナント募集をどうするのか。梅田阪急ビル、大阪富国生命ビルの入居情報としては、いずれも40%前後と厳しい現況と聞いています。

またオフィスの賃料ですが、共益費込みの賃料で、いかに月坪当り2万円を超えさせるかと厳しい戦いが始まっております。「オフィスのテナント集め」、「商業施設の魅力ある店舗づくり」、まさに「梅田周辺貸ビルの大戦争」が始まっております。しかし「禍を転じて福と為す」ですが、「天の声、地の声、人の声」を今こそよく聞き、苦しんで、苦しんで、知恵を絞り出してこそいい街ができると思います。そうしなければ「大阪らしい魅力ある街」はできないと思います。本日は、ご清聴ありがとうございました。