「話す力・聞く力」 (有限会社あっとマイク代表・プロトレーナー 吉本 真樹 氏)

2013年3月25日(第2637回例会)

(担当会員:中安 敬人 君)

 

今日は有難うございます。吉本真樹と申します。
まず、テーマに入る前に、こんなデータをお伝えしたく思います。ドイツの心理学者でエビングハウスさんという方が分析された「エビングハウス忘却曲線』がありまして、それによりますと人間の脳の記憶は、20分で42%、60分で56%、一日で74%忘れるようです。この事を考えますと、これからの30分の話は、約45%忘れられるということになりますが…。どうぞよろしくお願い致します。(笑)
さて、以前、東京のコーチ仲間から興味のある情報が届きました。会社を倒産させた社長50名に集まってもらい、「なぜ、倒産してしまったのか」を語り合う会を開いたそうです。それによりますと、倒産させた当初は、「原因は会社の外側にある」と思っていたそうです。例えば、「金融市場の動向が悪い。政府の経済政策ができていない。倒産の原因は不景気である」と。しかし時間が経って考えてみると、原因は会社の内側にあったのではないかということに気づいたそうです。そこで、この会に参加された50名の経営者にアンケートをとったところ、3番目に多かったのは「次の経営者を育てていなかった」。2番目は「商売の原則原理と目的を見失っていた」。そして一番多かったのは「人の話を聞かず、傲慢であった」ということでした。そのことからも、如何に「聞く」ことが重要なのかが分かります。そう言えば、昨年、本屋さんでミリオンセラーになっていた作家の阿川佐和子さんの著書「聞く力」が思い出されます。なぜ、それほどまでに売れたのか。ここには、人が求める「聞く力」の重要性があるからではないでしょうか。
実は、私は元々テレビ局でアナウンサーの仕事をしておりました。現在はコーチングのコーチの資格も取得して、フリーアナと企業などのコーチの仕事をしています。その中で、最近までラジオで報道番組のキャスターを担当していました。ニュースの中で、殺傷事件や傷害事件、また家庭内暴力の何と多かったことか。警察が容疑者を取り調べていくと、「自分をわかって欲しかった」「親は何も話を聞いてくれなかった」「相手が俺の話を聞かず一方的に決めつけて扱われた」など、「聞く」ことのコミュニケーション不足が原因だった事がわかりました。小さいようですがとても重要なことです。どうして人は、人の話を聞かないのか。聞いているつもりで、本当は聞いていないのではないか。果たして「聞く」とは、どういうことなのか。皆さんはどう考えますでしょうか。「聞く・訊く・聴く」この文字からもわかりますように、様々な聞き方があります。相手からの話を一方通行で聴く。もうひとつは、相手に効果的な質問を投げかけて言葉のキャッチボールをしながら聴く。そこには「相手の目を見て、しっかり相槌を打って聴く」「相手が話しやすくなるような態度や言動を取る」「相手の話を途中で遮ることなく最後まで聴く」「相手の考えや思いを確認せず、勝手に決めつけて意見などをしない」「相手の失敗を指摘して、こちらの考えを押し付けることはしない」などが効果的なコミュニケーションの聴き方として重要です。
何人かの人に「話すことと聞くことでは、どちらが大切だと思いますか?」との問いに対して、8割近くの人が「話すこと」と答えてくれました。私も話すこと、話す力は大切だと思います。わかりやすく話す。しっかり内容を組み立てて話す。言葉を詰まらせずに話す。そこには伝える力、まとめる力、対話力なども含まれるでしょう。更には、そこに「聞く力」を意識して「話す力」にすればどうなるか。私は、一層の効果があると思うのです。たったひと言の「聞く言葉の力」の影響力の凄さです。「あのひと言が励みになった。あの人のたった一言が嬉しかった。あの言葉が一生の宝物になった。」一方では、「あの一言が相手を怒らせた」・・・妻を含む(笑)。「たった一言のあの言葉で相手を嫌いになった。」こんな経験はないでしょうか。皆さんは、組織の中でとても影響力のある方々だと思います。だからこそ、このひと言の「話す力」の影響をうまく利用されてみてはいかがでしょうか。
そこで人には4つのタイプがあることを意識してみてください。①人や物事を支配していくコントローラータイプ。②分析や戦略を立てていくアナライザータイプ。③人や物事を促進していくプロモータータイプ。④全体を支持していくサポータータイプです。人は、自分の好きなように聞いて、好きなように理解します。この話をお聞きになっている今がそうです。おひとり、おひとり、理解や解釈、意味づけが違うと思います。そこに人のタイプを意識していくことによってコミュニケーションに変化がでてくると思います。
こう考えてみますと、大勢の皆さんの前では「話す力」を意識して、逆に少人数やひとりの相手との時は「聞く力」を意識すると効果的なコミュニケーションや相手の潜在能力を引き出せるかも知れません。今日は「話す力・聞く力」の表層部分しかお話しできませんでしたが、興味があれば、いつでもお伺いさせて頂きますので、宜しくお願い致します。では最後に、この詩をお聞き頂いて、終わりにしたいと思います。

 

話を聞いてくれと言うと、あなたは忠告をはじめる。
私は、そんなことは頼んでいない。
話を聞いてくれというと、
そんなふうに考えるものじゃないとあなたは言う。
あなたは、私の心を踏みにじる。
話を聞いてくれと言うと、
私の代わりに問題を解決しようとする。
私が求めているものは、そんなことではない。
最後まで私の話を聞いてください!
私が求めているのは、それだけです。
何も言わなくていい、何もしてくれなくていい。
ただ、私の話を最後まで聞いてくれたら、
次は、あなたの話を聞きますから。
何かの参考になれば幸いです。本日はお招き下さって本当に有難うございました。