「出前授業について」(大阪府住まい・まちづくり 教育普及協議会 会長 戸田 和孝 氏 君

2010年10月18日 (第2530回例会)

出前授業はロータリーの精神から言えば正しく職業奉仕の範疇に属しますが、ロータリーとは違うルートから、私ども建築事務所協会に話がきました。大阪府では住まい、まちづくりに関する教育を早期に行うことの重要性を認識され、私どもはかねがね日本の住まいに関する教育が世界レベルから見て貧しいと感じていたところでした。まち、景観を根本的にちゃんとしたものにするには小さい頃からまち、景観、住まいに関して興味を持ちきっかけを作ることが大切です。大阪府と組んで幾つかのプログラムを作って、平成17年に2校の小学校で出前授業を実施し、それが好評で輪がどんどん広がっていって、平成20年に大阪府住まい・まちづくり教育普及協議会ができました。大阪府を中心に建築に関わる団体のほとんどが加盟して、より輪を広げて出前授業を展開しているところです。平成22年に入って延べ15時間ぐらい、色々な小学校に出向いて、授業をさせて頂きました。出前授業の展開の仕方は、我々の方で幾つかメニューを用意し、それを校長会で説明したり、先生方の勉強会でメニューを配ってアナウンスをします。学校によって事情が違いますので事前に入念に現場の先生方と打ち合わせを行います。メニューとしては「バリアフリーに関して」「快適な住まい」「防災」「ユメイエ」を4つの柱としています。

バリアフリーの授業は体育館にみんなを集めて、初めの20分間ぐらいで、バリアフリーの工夫を写真で紹介します。相手が子供ですので、色々な形で問い掛けながら進めていきます。次は子供たちに実際に経験してもらいます。社会福祉協議会の方とタイアップし、車椅子体験、目隠しをして杖を持った人の誘導の仕方を学ぶなど、基本的に障害を持った方の立場に立って物を考えるという訓練の一環になります。目の見えない人のためのオセロゲーム、テレホンカードなど、身の回りには障害を持った方に対する配慮されている商品が沢山あることも教えています。点字ブロックの上を歩かせたり、手の不自由な方でも扱いやすいトイレの水洗金具、滑りにくい床などを紹介し、一日目の授業でバリアフリーの概略と体験をさせます。そして宿題を出して、1週間後に「便利不便探検ノート」を回収、我々で分析し、それをネタに教室で授業をします。バリアフリーの授業の落としどころは、建物をいくらバリアフリーの設備にしても、使う人がそれに配慮した心を持っていなければ何の役にも立たない、例えば点字ブロックの上に自転車や荷物を置かない、ちょっとした段差であれば、みんなが協力して車椅子を持ち上げれば済むなど、「建物だけの問題ではないよ、みんなの心の問題もあるんだよ」というところです。

防災の授業について、日本各地で起こった大災害の映像を流して、災害の恐ろしさ、いつ起こるか分からないということを話します。子供たちに防災マップを作ってもらいました。8班に分けて、校区を8つに分けて、避難場所にするところ、危険な場所などチェックしてもらいます。それを大きな白地図に落とし込んで、完成は畳6畳分ぐらいになり、達成感の味わえるプログラムです。また、防災カルタを作って、遊びながら防災の意識を高めたり、防災スリッパを新聞紙で作ったりもします。

快適な住まいについて、世界中の面白い家を映像で紹介し、気候と風土によって家はこんなに変わるものだと勉強し、子供たちに実際の木造家屋の5分の1の模型を作ってもらいます。窓をどこに開けるとどういうふうに光が入ってきて、風が抜けていくか、実際に体験しレクチャーしていきます。

「夢の家」について、映像で我々が作った夢のような家、木の上の家、地中に作った家を紹介し、みんなはどんな家を作ってみたいか問い掛けます。自分なりの絵を描いてもらって、自由に曲げたり切ったりできるスチレンボードを使って工作をします。子供なりに工夫して真剣な表情で作っており、子供たちの想像力を喚起するようなプロジェクトだと思います。それぞれの専門分野で頑張っている者にとって、子供たちにその楽しさを知ってもらうことは、将来において非常に大切なことではないかと考えます。そういった意味でも皆様方の出前授業に対してのご協力をどうかよろしくお願い致します。