「時代は変わった」(学校法人 大阪産業大学 常務理事 重里 俊行 氏)

2010年4月26日 (第2511回例会)
担当会員  山田 陽康 君

21世紀に入って既に10年目、10年一昔です。皆様方の判断力、考えの基本を作っている尺度は、20世紀後半のものです。この中に夏に蚊帳を吊って寝ている方はいらっしゃいますか。恐らくおられないと思います。蚊帳を吊って寝ていた時代から、これだけ大きな変化があり、日々新しい時代、よくぞここまでついてこられました。

私が父と祖母と、初めて大阪駅から東京行きの汽車に乗ったのは4~5才の頃、昭和29年か30年の夏だったと思います。特急といっても蒸気機関車、エアコンもなく、トンネルでは窓を閉め切って、トンネルを抜けると窓を開け放ち、涼しい海風が入ってきたことを覚えていますが、その旅行は一仕事でした。そんな時代から考えると、還暦を過ぎた方々、よくぞここまで、この時代の変化に適応されてきたと思います。21世紀に入って10年、皆様方は一人の例外もなく、前世紀の遺物です。今年は平成生まれの諸君が成人式を迎えました。

21世紀、これから我々はどういうふうに世の中の動きを感じ取ればいいのか。多くの方々が何らかの形で「今までとは違うな。時代が変わったなあ」という気持ちをお持ちだと思います。この先はどうなるのかは、なかなか分からない。それを何らかの形で自分の生業に関連して、家族構成、個人の人生において、ある程度の心づもりを持つことが、やはり大事ではないかと思います。

何もなかった時代からテレビが映り、今や携帯電話でテレビが観られますので、夢のまた夢です。7~8年前、友人の車に乗せてもらったら、カーナビを嬉しそうに自慢していたのが思い出されます。

一番大きなことは、いつの時代も人間社会は変化し、時代によって変化の内容が変わるのではないかということです。20世紀後半は、日本の市場が歴史上極めて大きく変化しました。高度成長期が1960年ぐらいから徐々に始まって、1965年には完全な高度成長期に入りました。その前は無茶苦茶なもので東京も大阪も焼け野原、そこから復興という特殊な時代の中での成長時代があります。外面的な変化が非常にはっきりと表れた時代です。目に見える形の変化であり、郊外に高速道路ができて、首都高速ができて、新幹線ができて、企業においては毎年出荷量が増えていきました。非常に分かりやすい流れであり、経済、社会の成長期です。当時は、かなりぼやっとしていても、大体こうなっていくなというのがわかりました。成長期がずっと来て、その後は成熟の時代です。子供でも年々身長が伸びて、見ていると、どういうふうに育っていくかが分かります。これが成長時代の経済にも当てはまります。

成長時代の経済は、どんな経営者であっても経営ができたといえます。差はありますが、それなりに伸びるチャンスがありました。松下幸之助のような人物もいれば、シャープ、サンヨー等々色々なところが、どんどん新記録を出せる時代でした。

成熟時代になると、子供たちも外から見た変化が乏しく、経済も同じで、内面的な変化が大きく出てきます。例えばビル、外から見たら同じでも、中に入ると、この前まであったお店がなくなったりしています。成熟時代は内面的な変化が主流です。いいことでも悪いことでも、外から見たら変化があまり実感できませんが、本当は注意しなければなりません。こういう時代になると経営者は大変です。外から見えないので変化を読むことが難しくなってきます。手間はかかるし、しんどいことだと思います。  私は大阪産業大学の常務理事をさせて頂いています。10年前の私立大学、こんなにぼろい商売はないと思っていました。受験者10万人、受験料3万円を払って試験を受けにきてくれます。しかも先払い、30億円です。お茶を出すわけでもなく、「いらっしゃいませ」ということもなく、更に学校法人は固定資産税ゼロ、都市計画税もゼロ、これで経営できなかったらおかしいです。いい時代でした。その後、少子化が進み、子供の数が増えていません。皆様のお仕事は回復を望めますが、うちの商売はそれができません。18年先まで潜在的なお客様が何人か分かってしまいます。大学が国際競争、グローバル社会で生き残れるかというと、ほとんど無理です。そんな中で大変です。更に皆様方企業の従業員さんと違って、大学の先生は特殊です。一つのことを決めるのに議論の長いこと、易しいことをわざわざ難しくします。そして行動力に欠くと思います。そんな中で、私のような気性の者はガンガンと物事をはっきりと言いますので、「重里事務局長は見識不足だ」と言われたりします。

時代は変わった。これからの時代、成熟した世の中を如何に生きていくのか。サバイバルのためには何が必要かということになります。成長時代、山奥の渓流から始まった日本の経済、みんなと同じように水面を流されて、流れに逆らわずに流れていけば、そこそこワクワクする体験ができたのではないかと思います。今は河口に来ており、ぼんやりしていると満潮時には圧し戻されます。これからは個性と独自の考え方、独立自尊、決してマスコミの風潮や業界の常識に捉われずに、力強く自分の考え方、自分の選んだものに賭けてみる。みんなの賛同なんか得られなくても自分はこれだと思うような考え方、インディペンデントの精神です。私の母校である慶應義塾大学の創始者、福沢諭吉先生、福沢先生は経済の神様です。今、世界は政治的には民主主義、今の日本、税収35兆円、21兆円は国債関係、残り14兆円は地方交付税になりますので、残はゼロ、全部借金で賄うことになります。皆様方はこれから自分の原点に戻って、自分らしく、私らしく人生の仕上げにとりかかって頂くことを心から祈念しています。そして懐かしいロータリークラブの例会でお話をさせて頂くという栄誉に深く感謝し、私の話を終えさせて頂きます。

本日は有難うございました。